小話/hollow ブロードブリッジ弓視点
原稿のためにUBWとブロードブリッジを読み直してたら書きたくなったので勢いに任せて殴り書き。
色々荒いですがご容赦を。
振り仰げば空に架かるは終末の夜から明日の誕生へとを繋ぐ光の橋。
その幻想的とすら言える光景を見上げ、冬木の地を管理する魔術師は肩を竦めた。
打ち合わせたわけでもないのに知らず同じ橋へと布陣を敷くことになったマスターは、ありったけの魔術礼装と宝石にて武装し眼下の地獄を睥睨する。
こちらには未だ気付かぬままに彼女は境界線に立つ。
「迷うコトなんてない。
わたしは、この街を管理する遠坂の魔術師だ」
躊躇いを断ち切るかのように、宣言する。
「……っ、ああもう情けないったら――!」
自らを叱咤し鼓舞するように声を上げ、
「――――、Anfang」
そうして、彼女は一歩を踏み出した。
……そうだ。 (――我知らず口許がつりあがる。)
それでなくては、オレが此処にいる意味はない。 (――遠いいつかのように、その背を護ろう。)
自らに課した役目通り、死地へと己の意思で踏み込める君こそが――遠坂凛だ。
その振り返らない背中に既視感を抱く。
過ぎ去った、もう二度とは戻らない日にも同じ背を見た。
闇に溶けることなく凛々しく赤い彼女を象る輪郭。
微かに震える肩は。
いつだって衛宮士郎にとっては頼もしく映った彼女の、弱さ。
遠い昔にも気付いていなかったワケではない。
それでも、オレはその弱さを理解することは出来ていなかった。今、目の前の強張った彼女の肩に思い知る。
こんな身になってようやく、オレは彼女がどれほどの重さをその双肩に負っていたのかを実感出来たのか。
そして、この感傷こそが、自身と彼女との間の絶対的な埋めることの出来ない隔絶の証だった。未だ胸の裡にある消えない、消えることなどないだろう郷愁が訴える痛み。伸ばした腕が届くことはない。遠い追憶を振り切るように瞼を閉じ、そして。
「――ふむ。血気盛んなのは結構だが、肩に力が入りすぎじゃないか?
いや、戦うのなら皆殺しにする、というのは実に君らしい話だが」
ゆっくりと歩み寄りながらいつも通りの軽口を叩き合う。顔を合わせずともお互いがどんな表情を浮かべているかなど手に取るように解る。こんな関係が、今のオレ達には丁度いい。
もう既に終わりを告げた、共に駆け抜けた日々にそうだったように。
「――OK。付き合ってくれる、アーチャー?」
「ああ、サーヴァントはマスターに従うもの。
これでようやく―――」
手にした紅き聖骸布を翻す。
馴染むそれは、奇しくも彼女の象徴ともなる色。そんなことにさえ微かな満足を覚え、
――心は踴る。
もう一度、彼女と背を預けて闘える奇跡(夜)に。
この夜こそが、オレの闘い。
「―――最後に。加減なしで、戦えるというものだ」
夜明けまで刹那の刻。
今宵、ただ一人のサーヴァントとして仕えるべき主人と夜を往こう。
これを書いてて改めて本当に自分の中のアーチャーは衛宮士郎だったんだなぁと実感。
全く別に書き殴っていた士郎と繋がったりして。
ブロードブリッジは本当にあのやりとりが衛宮士郎と遠坂凛で切なくも嬉しかった。